ビットトレントをめぐる諸問題

ビットトレントについて

あるピアがどの程度ピースを持っているかは、外部からはわかりますか

一般的には、あるピアがどの程度のピースを持っているかを外部から直接知ることはできません。ビットトレントプロトコルにおけるピア間の通信は基本的にピア間で閉じられており、ピースの情報は直接的にはその通信を行っているピアだけが知ることができます。

しかし、あるピアが他のピアに対して送信する「bitfield」メッセージや「have」メッセージは、そのピアがどのピースを持っているかの情報を含んでいます。したがって、あるピアが他のピアと通信を行っている場合、その通信を通じて他のピアはどのピースをそのピアが持っているかを知ることができます。

また、トラッカーは各ピアからの報告を受け取り、それを元にピアの状態(例えば、ダウンロード済みのピースの量やアップロード・ダウンロードの速度など)を一部把握することができます。ただし、トラッカーが具体的にどのピースをそのピアが持っているかを知ることはできません。

最後に、ビットトレントの通信は一般的に暗号化されていないため、ネットワークの通信を監視(スニッフィング)することで、ある程度の情報を把握することは可能です。しかし、これはプライバシーの侵害となり、多くの国や地域で法律により禁止されています。

ピアID(Peer ID)について教えてください

ビットトレントプロトコルにおけるピアID(Peer ID)は、ネットワーク上の各ビットトレントクライアント(ピア)を一意に識別するための文字列です。ピアIDは通常、20バイト(160ビット)の長さを持ち、それぞれのピアは自身のピアIDを生成します。

ピアIDは通常、特定のフォーマットに従って生成されます。このフォーマットはクライアントによって異なることがありますが、一般的にはクライアントの識別子、バージョン番号、ランダムまたは一意な文字列の組み合わせとなります。

たとえば、一部のクライアントでは以下のようなフォーマットを使用します:

- **クライアント識別子**:2文字で、クライアントの種類を表します(例:"UT"はµTorrentを表します)。
- **バージョン番号**:4文字で、クライアントのバージョンを表します(例:"1234"はバージョン1.2.3.4を表します)。
- **ランダムまたは一意な文字列**:14文字で、そのピアを一意に識別します。

したがって、"UT1234-abcdefghijklmn"というピアIDは、µTorrentのバージョン1.2.3.4を実行しているピアを表し、"abcdefghijklmn"はそのピアを一意に識別するための文字列です。

ピアIDは、ビットトレントプロトコルにおけるハンドシェイクの一部として他のピアに送信され、他のピアがそのピアを一意に識別するために使用します。また、トラッカーが各ピアを識別するためにも使用します。

BitTorrent Extension Protocolとはなんですか。いつから導入されましたか。主要なクライアントは対応していますか。

BitTorrent Extension Protocolは、ビットトレントプロトコルの拡張版で、より柔軟で効率的なピア間通信を可能にするために設計されました。このプロトコルは、メッセージの拡張とピア間での任意のメタデータの交換を可能にします。

BitTorrent Extension Protocolは、ビットトレントのバージョン4.0から導入され、それ以降のバージョンではデフォルトで有効になっています。これにより、新しい機能や改善をプロトコルに追加できるようになりました。

主要なクライアント、例えばµTorrent, qBittorrent, TransmissionなどはBitTorrent Extension Protocolをサポートしています。これにより、これらのクライアントは「have all」や「have none」メッセージのような拡張メッセージを送受信することができます。また、DHT(分散ハッシュテーブル)やPEX(ピア交換)といった機能もこのプロトコルにより可能になりました。

ただし、古いクライアントや一部の特定のクライアントはBitTorrent Extension Protocolをサポートしていないかもしれません。そのため、すべてのビットトレントクライアントがすべての拡張機能をサポートしているわけではありません。

「have all」メッセージについて教えて下さい。送られないときもありますか。

ビットトレントプロトコルにおける「have all」メッセージは、あるピアがすべてのピースを持っていることを他のピアに通知するためのメッセージです。つまり、ファイルを完全にダウンロードしたピアが、それを他のピアに伝えるために使います。

しかし、「have all」メッセージはビットトレントプロトコルの初期バージョンには存在せず、後の拡張(BitTorrent Extension Protocol)で追加されました。そのため、拡張プロトコルに対応していないビットトレントクライアントは「have all」メッセージを送らないかもしれません。

このようなクライアントが全てのピースをダウンロードした場合、それぞれのピースをダウンロードするたびに「have」メッセージを送り、最終的に全てのピースを持っていることを他のピアに通知します。

一方、拡張プロトコルに対応したクライアントは、「have all」メッセージを一度だけ送ることで、全てのピースを持っていることを他のピアに効率的に通知することができます。

unchokeメッセージの詳細について教えてください

ビットトレントプロトコルにおける「unchoke」メッセージは、あるピア(送信者)が他のピア(受信者)に対して、データのアップロードを開始する許可を与えるためのメッセージです。

ビットトレントでは、リソースの管理とネットワークの混雑を防ぐために、「choking」というメカニズムが利用されます。これは、一度にアップロードできるピアの数を制限するものです。つまり、あるピアは一度に特定の数のピアにしかデータをアップロードしないという制約があります。

ピアは、これらの「スロット」をどのピアに割り当てるかを自由に決定できます。そして、スロットが割り当てられたピア(つまり、「unchoked」されたピア)は、そのピアからデータをダウンロードすることができます。

逆に、スロットが割り当てられていないピア(つまり、「choked」されたピア)は、そのピアからデータをダウンロードすることはできません。ただし、chokedされたピアでも、他のピアから自分がデータをダウンロードすることは可能です。

この「unchoke」メッセージと対になるのが「choke」メッセージで、これはピアに対してデータのアップロードを停止する通知をします。

このように、ビットトレントは「choking」メカニズムを用いて、効率的なデータの配布と公平なリソースの利用を両立しています。

haveについて詳細を教えてください

ビットトレントプロトコルにおける「have」メッセージは、ピアが新たにファイルのピース(部分)をダウンロードしたことを他のピアに通知するためのメッセージです。

haveメッセージは以下の1つのパラメータで構成されます:

1. **index**:新たにダウンロードしたピースのインデックス(位置)です。ファイルの最初のピースはインデックス0、2番目のピースはインデックス1、といった具合に数えられます。

例えば、あるピアがインデックス3のピースを新たにダウンロードした場合、そのピアは他の全てのピアに対して「index=3」のhaveメッセージを送ります。これにより、他のピアはそのピアがインデックス3のピースを持っていることを知ることができます。

このhaveメッセージは、各ピアがどのピースを持っているかを常に最新の状態に保つための重要なメカニズムです。これにより、各ピアはどのピースを次にダウンロードするかを決定するための情報を得ることができます。

なお、ピアが全てのピースをダウンロードし終えてファイルを完全に持っている場合、そのピアは「unchoke」メッセージとともに「have all」メッセージを送り、全てのピースを持っていることを他のピアに通知します。

pieceについて詳細を教えてください。実際の例も挙げてください。

ビットトレントプロトコルにおける「piece」メッセージは、ピアが他のピアに対してファイルのピース(部分)のデータを送信するためのメッセージです。これは「request」メッセージに対する応答として送られます。

pieceメッセージは以下の3つのパラメータと、その後に続くデータブロックで構成されます:

1. **index**:送信するピースのインデックス(位置)です。ファイルの最初のピースはインデックス0、2番目のピースはインデックス1、といった具合に数えられます。

2. **begin**:送信するデータブロックが、該当するピースの中でどの位置から始まるかを示すオフセットです。

3. **block**:実際のデータブロックです。これは「request」メッセージでリクエストされた長さのデータです。

例えば、あるピアが「request」メッセージでインデックス1のピースの最初の16384バイトをリクエストした場合、応答するpieceメッセージは「index=1, begin=0, block=(16384バイトのデータ)」となります。このpieceメッセージを受け取ったピアは、そのデータを用いてファイルの対応する部分を再構築します。

このように、「request」メッセージと「piece」メッセージを用いてピア間でファイルのピースのダウンロードとアップロードが行われ、全てのピアが最終的にファイル全体を取得することができます。